移動が多かった2023年上半期。落ち着いてきたので、少しずつ振り返っていきたいと思います。
4月上旬は、ヘルシンキ大学男声合唱団140周年記念コンサートでの委嘱初演のため、フィンランドへ。
奄美大島最北端の集落、佐仁の八月踊りからインスピレーションを受けて作曲した
「てまんかいー奄美の八月踊り」がヘルシンキミュージックセンターで初演されました。
奄美の八月踊りは、旧暦8月に行われる祭事で、豊年を祝い、 シマ(集落)の安全を祈願するための踊りです。
円形になり、 お互いを感じながら男女で即興的に歌を掛け合うことが特徴。
「 てまんかい」は、「手で招く」という意味で、 聖霊を招くための踊りの仕草です。
呼吸が声に、 声が動きになって、人々はもちろん、 先祖や神様も共にいることを感じられる空間作りを目指しました。
3つの奄美の歌で構成されていて、
1)場を清めるために八月踊りの最初に踊られる「祝いつけ」
2)お祝いの席で締めとして踊られる「六調」
3)奄美に古くから伝わる姉妹神(うなりがみ) に祈りを捧げる「ヨイスラ節」
がお祭りの情景とともに、1つの作品として展開していきます。
140周年記念コンサートのテーマが、「女性から男性へ」(!)だったので、
古くから女性が政治的・社会的に重要な役割を果たしてきた奄美をテーマに選びました。
コンサート前には、ホワイエでのプレゼンテーションもあり、
日本語でも難しい奄美の文化を、フィンランド語で説明して、ワクワクドキドキでしたが
皆さん真剣に聞いてくれて、興味を持ってくれたようでした。
コンサートプログラムは、5人の女性作曲家への委嘱作品と、歴史あるフィンランド男声合唱作品が並び、
カンテレが随所に挟まって、ナレーターのような役割として世界観を作る演出。
ライトもおしゃれ。
「てまんかい」は、即興的な掛け合いや、動きもある作品なので、
リハーサルではいろいろ調整されていましたが、
本番は、ホールが底から揺れるくらいの圧倒的なサウンドが鳴り響いていました。
遠い国の、独特な文化を背景に持つ作品を
1人1人が誠実に向き合って、演奏してくれている姿から、
奄美の人たちとフィンランドの人たち、
実際には会っていないけど、つながっていることが実感できて
感無量でした。
私の作品は、次の曲と続けて演奏する演出でしたが、
曲が終わった後、「ブラボー!」とあちこちから歓声が上がって、
言葉も文化もわからない作品を、お客様も受け止めてくださったことが
ダイレクトに伝わって、とてもうれしい瞬間でした。
こういうところが、フィンランドはすばらしい。
能動的に感じて、表現する。そうありたいなあといつも感心します。
終演後も、たくさんの方が声をかけてくださって、ありがたかったです。
約3年ぶりのフィンランドは、いろいろ変化を遂げていて
戸惑い、そして乾燥!でしたが、
久しぶりに友達や、恩師に会うこともできて、
充実した時間になりました。