2015年に書いた「ホトトギス」という男声合唱曲があります。
フィンランド・ヘルシンキの男声合唱団
Akademiska Sångföreningen (アカデミック男声合唱団)からの委嘱で、
初演は2017年です。
この話の発端は、2014年のJCAユースクワイアでした。
JCAユースクワイアは、全日本合唱連盟主催のイベントで、
若い歌い手が集まって、海外から招聘された指揮者と共に
コンサートを作ります。
三重で行われた第3回の指揮者は、フィンランドのKari Turunen(カリ・トゥルネン)。
私はアシスタントコンダクターを務めました。
以前からKariとは知り合いでしたが、
ゆっくり話すのはその時が初めてでした。
フィンランドで私の曲を聞いてくれたようで
「今度うちの団にも書いてよ!」
と声をかけてもらい、彼が指揮者を務めるAkademiska Sångföreningen のために
曲を書くこととなりました。
コンサートのテーマは「鳥」。
あとはすべて自由というオファーだったので、
言語は日本語を選びました。
鳥、鳥・・・・
とイメージしていると、正岡子規が浮かび
『卯の花の散るまで鳴くか子規』
に心が動きました。
子規の本名は、升さんです。
ホトトギスと読む「子規」をペンネームにしたのは、
ホトトギスの鳴き方が懸命で、のどの赤い部分を見せるため、
結核に冒され喀血した自分自身と重ね合わせたから。
その後、結核菌から脊椎カリエスを患い、
34歳で亡くなるまで病気と闘いながら
多くの俳句・短歌を生み出しました。
卯の花は、子規が最初に喀血した5月頃咲く花です。
この曲では、子規が俳句に適用し、文学を近代化に導いた
「写生」のアイディアを元に、
見えるものを音にすることをテーマにしました。
卯の花が咲いていく様、
そしてそこにホトトギスがやってきて、子規が結核を患う描写、
最後は寝たきりであっても、情熱的に俳句を生み出す子規
を表現しています。
Akademiska Sångföreningenは、2017年の初演後、
今年行われた180周年記念(江戸時代・・・!)コンサートで再演してくれました。
この作品を送ったのは日本に帰国した後だったので、
演奏を聴くのは、先日公開されたYoutubeが初めて!
映像とのコラボレーションによって、
曲に内在するイメージが伝わる
力強いパフォーマンスになっています!
しかも音のタイミングにピッタリ!!
これを見たときに、
フィンランドらしいな、と思いました。
想像力と創造力に長け、
そしてそれをサラッとやってしまう感じ。
作品が自分の手から離れ、
演奏者の新たな視点で表現してもらうことは
本当にうれしいことです。
今回は、日本人の感覚にフィンランド人のセンスが
掛け合わされていますので、
芸術的なビデオにもご注目いただきながら
ぜひ「ホトトギス」お聴きください!
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